男が近づいて来る。静かに、そして確実に。
男が動く度に、少女の体が恐怖で震えていく。
一歩、一歩近づく。しかし、不意に男の動きが止まった。
少女は、自分の目を疑った。目の前で起こっている事を。
男は、歩く行為を止めた途端、異変は起こった。
狼男が、満月で変わる様に男も人間以外の物になった。
服は契れ、骨格事体変わっている。
闇夜に悲鳴が轟く。少女が恐怖で、そして混乱して声を上げた。
もう1人の男が呟く。
「バルバス、早く始末してしまえよ。周りに気づかれると面倒だ。」
かつて人間だった男は、腕を振り上げた。少女を殺す為に。
しかし、何時まで経っても、その目的は果せないでいた。
少女の目の前で、石の様に固まっていた。
いや、少しだが、小刻みに震えている。
「どうした?バルバス。」
不信に思った人間の男が近づいてきた。
その時、バルバスと呼ばれていた化け物は、腕を振り下ろした。
少女ではなく、近づいてきた男に向かって。
「!!」
男は、左肩から血を流している。
しかし、怪我の事よりも自分に攻撃してきた事の方が重大のようだった。
「ばかな・・・なぜ?こちらに攻撃する?気でも狂ったか?」
「そんなはずは、ない。あるはずない。」
しかし、男の言っている事と反してバルバスは、さらに攻撃してくる様子だ。
怪我をした男も人間以外の化け物になった。
バルバスとは、違う物に。
少女は、さっきから座っていた。目の前の出来事を見つめていた。
(何が起っているの?殺されると思っていたのに。)
少女の前では、2匹の化け物が闘っている。
(私を助けてくれたの?でも、どうして?)
少女は、疑問だらけだった。殺そうとしたのに、助けてくれてた。
訳が分からない。(でも、悲しそうな瞳だっだ。あのバルバスって・・)
少女は、目の前の光景を見ていた。
そして、そんな少女たちを赤い月が、見ていた。