化け物の同士の闘いは、まだ続いていた。
お互いを傷付け合うだけの闘いが・・・
どちらも、深手を負っているように見える。
体毛が、真っ赤に染まっているからだ。
「ガッ・・・」
短い声と共に、一つの影が倒れた。
そして、倒れた体から煙が立ち上る。
「えっ?」
少女は、はっきり見た。その体が、解けていくのを・・・
「・・・どうなって・・・」
(信じられない。体が解けるなんて。でも、・・・)
少女の後ろで、音がした。振り返ると、もう一人の化け物が倒れていた。
こちらも、煙が立ち上がったが解けなかった。
その変わり、人間の男になった。元に戻ったのだ。
「・・・・・」
少女は、すべて見ていた。人間が化け物に変り、一人は、解けて消えた。
残りの一人は、元に戻った。
少女は、近くにあった自分の鞄を持って動いた。
(こんな所、早く逃げなきゃ)
しかし、不意に動きを止めた。
(このままにしておけないよね。一応、助けてくれたみたいだし)
「仕方ない。」
少女は、くるりと向きを変えて倒れている男の近くに行った。
怪我をしてはいるが、思ったほど深い怪我ではないようだ。
(なんで、何にも着てないのよ!)
少女は、真っ赤になって自分の鞄をゴソゴソと探し始めた。
「確かここに入れたと・・・あった。」
少女が手にしたのは、男物のシャツであった。
「本当は、パパのだからヤだけど・・・仕方ないよね。」
誰か相手がいるように独り言を言いながら着せていく。
「ったく、なんで私が・・・んっもう!着せずらい!」
少女は、必死にシャツを着せるのに格闘していた。
不意に、着せやすくなった。
「あれ?・・・って!」
男が気が付いたのだった。男の口が動いた。
「・・・・理・・沙・・?」
「ほぇ?私は梓だよ。」
少女が答える。男はまだボーっとしている。
「俺は・・・一体?ゾアノイドになって、それから・・・」
「ゾアノイド?覚えてないの?私を助けてくれたんだよ。」
少女は、シャツのボタンを掛けながら答えている。
男は、少女を見ていた。
(俺が助けた?ゾアノイドに調整された俺が?)
「ねぇ、立てる?ここから離れたほうが、いいと思うんだけど?」
「・・・そうだな。俺が君を助けたなら。」
そう言いながら男は立ちあがった。
「いてっ!」
男は苦痛で顔を歪めた。しかし、動けない程の痛みではない。
「大丈夫?肩、つかまっていいよ。」
「あぁ、助かる。」
二人は、寄り添うように暗闇に消えていった。