I Miss You

いまだ、見慣れない風景。
同じ校舎で同じ階なのに、教室の場所が違うだけなのに…
まだ、しっくりとしない。
時間がたてば、それは無くなっていくのだろう。
この学校に来て、二度目の春がきた。

去年の春は、大変だった。
入学したてなのに、学内コンクールに強制的に参加させられた。
そして、秋にはアンサンブル、そこで出会った人々、音楽…
そして沢山、色々な事を教えてもらった。


音楽科の校舎の階段を下りていたら、去年には絶対にこの音楽科の制服を着ているのを見る事はない人達がいた。
土浦先輩と香穂先輩だった。
土浦先輩は、指揮者を目指して、香穂先輩は、ヴィイオリンを続ける為に普通科から編入してきた。

二人は、私に気がつかない。
私のずいぶん先を何か話しながら歩いていた。

まるで、今の私の状況みたい。
一生懸命に頑張っても、先輩達はどんどん先に行ってしまう。
私は、いつも後ろを頑張ってついて行くだけ…
そんな事を考えながら、先輩達の後ろを気づかれないように、邪魔をしないように歩いていく。
そんな時、土浦先輩が後ろを振り向いた時、私と目が合ってしまった。
どうしよう、挨拶した方が…とか色々と考えていたら、土浦先輩は、ふいに視線を外した。
ただ、それだけなのにどうしようもなく悲しかった。

ここに、今、この時間のこの場所に居たくなかった。
足が勝手に来た道を戻っていた。


ここは、静かで好きな場所。
屋上はいつも人が少ないから…
私は、気がついたらここに来ていた。
そして、自分の頬が濡れているの気がついた。
「どうして…?」
その瞬間、分かった。
そう、ショックだったんだ。
土浦先輩に視線を外された事が…
私は…土浦先輩の事が好きだから…
今までバラバラだったパズルが一瞬にして完成していく。
どうして、土浦先輩の音楽を聞くと心が躍るのか…
どうして、土浦先輩の事を自然と探してるのか…
どうして、土浦先輩と喋るとドキドキしてしまてしまうのか…
どうして、土浦先輩が嬉しいと私も嬉しくなるのか…
そう、私は土浦先輩が好きだから…
でも、でも…
土浦先輩は…
違う…
さっきのあの行動は、きっと拒否…
香穂先輩といたから、私には声をかけて欲しくなかったんだ。
そう思ったらもう、涙が止まらなくなった。
「ふぇ…」
小さな、出来るだけ声を出さないように泣く。
全部、悲しい事を出してしまおう。
そうすれば、先輩達とは今までどうりお話できる…
大丈夫…少しだけど、強くなれたんだから…
コンクールで、アンサンブルで…
少しだけ…
強くなれた…
でも…



すみません、もう少し続きます。
まずは、冬海ちゃんの視点で。
冬海ちゃんが2年になって、土浦と香穂ちゃんは音楽科に編入しています。
ネタバレになるのかなぁ…でも、ゲームが出てからかなり経ってますからOK?
しかし、冬海ちゃんをまたしても泣かせてしまった…(反省)