I Miss You

春になって学年が一つ、上がった。
ついでに学科も変わった。
まさか、この学校に入る時には、この制服は着るなんて思いもしなかった。
しかし、同じ学校なのに校舎が違うだけでこうも雰囲気が違う物なのか。
慣れた頃に卒業なんて感じかもなぁ…

ふと、そんな事を考えて教室を出たら、俺と同じ環境の日野とバッタリ逢った。
「よぉ、どうだ、そっちは?」
「まぁ、どうにかやってるけど…」
何だか、引っかかる言い方しやがる。
「何か言いたそうだな、日野?」
「いやー、何かさぁ…似合わないなぁって…」
「悪かったな、自分でも分かってるよ」
「ははは…多分、うん、慣れてないんだよ、うん」
「…変な慰めするな」
そんな他愛もない事を言いながら、音楽科の校舎の階段を下りていく。
その時、本当に何気なく、後ろを振り向いた。
そうしたら、俺達の後ろの方にアイツがいた。
バッチリ、あいつ、冬海と目が合ってしまった。
なんだか、急に恥ずかしくなって視線を外してしまった。
そう、音楽科の制服に慣れてない自分を見られたくないように…
そして、もう一度、振り向くと冬海は、いなくなっていた。
「どうしたの?土浦君?」
「えっ?ああ、いや、何でもない」
「変なの?」
「……」
気になる、どうして?冬海の事が…
いつもなら、キチンと挨拶をしてくる、本当に律儀なくらいに。
それなのに、さっきは…
何だかモヤモヤとした、嫌な気分が襲ってくる。
どうして、こんなにも気になる、冬海の事が…

「あー、日野、悪いなぁ、用事、思い出した」
「えっ?あっ、そう。うん、分かった」
「ああ、じゃぁな」
そう言って、日野と別れて下っていた階段を駆け上がって行く。
冬海を探す為に…
まだ、この音楽科の校舎の中のはずだ。
どこに…どうして、こんなにも気になる、冬海の事が…
あの時に目をそらした時、わずかに見えた冬海の顔が…
今にも泣きだしそうな顔をしていた。
俺の見間違えならいいが…
もし、違うなら…俺のせいで、あいつが悲しむのは嫌だから…
どうして?嫌なのか…可愛い後輩だから…
違う、そうじゃない。
これは、きっと…


いつの間にか屋上に続く扉の前にいた。
「とにかく、あいつを見つけて…」
ドアノブに手をかけて、ふと思う。
見つけて、どうする?
冬海を見つけて、俺はどうしたい?


 

まだ、続きます。
今度は土浦視点です。
しかし、似合わないんだろうなぁ…音楽科の制服は(^^;
一応、香穂ちゃんも音楽科に移っています。