年の差の恋のお題【金澤 王崎】

未経験区域
大事にされてるのは分かるけど
年では大勝、恋は完敗
不釣合いだなんて言わせない(金澤)
今のままで十分可愛い(王崎)
恋人同士に見られた日(金澤)
あなたに追いつく目標(王崎)
そんな顔もするんだね




不釣合いだなんて言わせない(金澤)

確かに美少女なんだよなぁ・・・
でもなぁ・・・

金澤は、冬海がそう言われてる事をふと思い出した。
いま彼の前で、一生懸命に音楽準備室の片付けをしている彼女の事だ。
ふと、冬海は金澤の視線に気が付いた。
「先生、サボっては駄目ですよ」
「あー、サボってるんじゃぁなくて、休憩してんの」
「・・・さっきからしてませんか?休憩・・・」
じーっと年下の可愛い彼女から睨み付けられれば、もう両手を上げて降参するしかない。
睨みつけられても、可愛いんだから仕方ない。

「先生?」
「あー、すまん、すまん。いやー、お前さんが効率よく片付けしてるなぁって感心してんだよ」
「・・・そんな事、ないです」
「んっ?いやいや、感心、感心」
そう言いながら、タバコに火を付けようとした手を止めた。
その仕草を不思議そうに見つめて、冬海は少し首を傾げながら
「どうしたんですか?先生・・・」
その仕草にさらに、金澤は、心の中で両手を上げた。
「あー、なんだ。冬海が片付けしてるのに、呑気にタバコを吸うのもなぁって思っただけだ」
「そう、ですか?でも、タバコは吸い過ぎは、体に悪いですから・・・」
「ああ、まぁ、少しづつ、減らしていくよ・・・多分・・・」
「くすっ、そうした方がいいです」
自分の近くで、くすくすと笑う彼女は、可愛く見える。
まさか、自分がまた恋をするとは思わなかった。
それが、年下でついでに自分の教え子とは・・・

「先生?どうかしたんですか?」
「いや、なに。少し考え事だよ。気にするな」
「・・・?」
「さて、片づけを再開するか」
「はい」

まぁ、美少女と言われる彼女と30過ぎのオッサンじゃぁ、不釣合いなのかもしれないが、
いまさら、そうそう手を離すことは出来やしない。
だから、覚悟しとけよ、冬海。



今のままで十分可愛い

少しでもアナタに近づきたい…
そう思うのはダメですか?

日頃から色々と香穂先輩や奈美先輩にアドバイスしてもらってたり、
自分でも色々と勉強した。
だって、アナタのそばには素敵な人がたくさんいるから…
頭では分かってる。
先輩は、見た目で判断するような人ではないのは分かってる。
でも、心配なんです。私なんかでいいのか…
先輩の横にいていいのか…
だから、少しでもアナタの傍にいてもおかしくない様に…

今日は、久しぶりに王崎先輩に会える日。
いつもとは、違う服を着て少しお化粧してみた。
「…どうなかな?変かな?少し、大人っぽいかな?」
鏡の前で身だしなみをチェックしていたら、
机の上に置いていた携帯のアラームが鳴った。
「えっ、もうこんな時間?急いで出ないと…先輩を待たせちゃう」
鞄に携帯を入れて、急いで部屋を出た。


「えっと…」
待ち合わせ場所である駅の改札口で、王崎先輩を探した。
彼は、すぐ見つかったが一人では無かった。
多分、知り合いだろうと思う女の人と話していた。
胸の奥がズキリと痛んだ気がした。
(ああ、まただ…)
先輩の横には、ああいう大人っぽい人の方が似合うと思う。
そう思うと胸の奥が痛み出す。

「あっ、笙子ちゃん」
「あら?」
「えっと…すみません」
少し戸惑いながら王崎先輩達に近づいた。
「ふ〜ん、可愛いお嬢さんね。じゃぁ、王崎君、またね」
そう言いながら、気のせいかもしれないけど…
彼女は少し勝ち誇ったような感じで去って行った。

「あの…すみません。お話の途中で…その…」
「ああ、別にたいした話してないから。それに笙子ちゃんと待ち合わせしたからね」
「でも…」
「うん?偶然会っただけなんだよ。それより…」
「はい?」
「笙子ちゃん、今日はいつもより大人っぽいね。それは、俺の為にと思ってもいい?」
「あっ…えっと…はい///」
「そっか、嬉しいよ。ありがとう」
先輩の一言で、胸の奥の黒いモヤモヤが晴れていく。
それは、魔法の言葉のように…

「でもね、俺は、笙子ちゃんは、今のままで十分可愛いと思うよ」
「あの…その…」
先輩の思わぬ言葉に、私の顔はあっという間に真っ赤になっていくのが分かった。
「くすっ、でもね、今の言葉は本当だから。俺は、笙子ちゃんが彼女でとっても嬉しいから」
「…それは…私もです…」
「だからね、これからもずっと二人で一緒にね」
「はい」
先輩の大きな手に包まれるとホッとする。

「さて、何時までもここにいても仕方ないから行こうか?」
「そうですね」
私達は、歩き出した。
大好きな先輩の手に包まれながら…



恋人同士に見られた日(金澤)

こうして、冬海と一緒に出かけるのは久しぶりだ。
まぁ、新学期が始ったばかりだし、こいつも大学に入ったばかりだしなぁ。
でも、どうにか都合をつけてやっと、今日こうしてひさしぶりのデートをしてる訳だ。

ふと、自分の横にいる冬海が足を止めた。
「んっ、どうした?」
「えっ、いえ…あの、可愛いなぁって思って…」
そう言いながら、彼女の視線の先には、アクセサリーを売っているワゴンがあった。
そのアクセサリーの一つが気になるらしい。
確かに、こいつに似合いそうな髪留めだった。
「どうですか?彼氏、彼女に買ってあげたら?」
そんな事いいながら、このワゴンの店員が俺たちに声をかけて来た。
まぁ、当たり前だな。
売るのが商売なんだから…
「コレがいいのか?」
そう言いながら、先ほど気になっているであろう髪飾りを指差して聞いてみた。
「えっ、あの…でも…」
「まっ、いいか。これ、くれ」
「ほい、まいど。よかったね、彼女♪」
そう言いながら、店員は手際よく、包装していった。
「あの、その、すみません」
冬海は、本当に恐縮していた。
まだ、こいつは俺に甘えると言う事は殆どしない。
それは、少し寂しい事だが、こいつの性格を考えると仕方ないのかもしれない。
そんな事をしてる内に店員が、商品を冬海に手渡していた。

それから、少し歩いて空いてるベンチで休憩している。
しかし先ほどから、冬海は嬉しいそうだった。
「そんなに、欲しかったのか、それ?」
俺は、そう言いながら先ほど買った物が入っている袋を指差した。
「えっ?えーと…金澤先生に買って、貰ったのも嬉しいんですけど…」
「…けど?なんだ?」
少し、顔を赤らめながら冬海は、
「あの…他の人にも恋人同士に見られたのが…その…嬉しかったから…」
そんな可愛い事を言った。
あー、もう勘弁してくれ。
俺は、心の中で両手を上げた。



あなたに追いつく目標(王崎)

あなたはいつもずっと先を歩いてる。
この学校に入学して、学内コンクールで知り合った時から…
そして、クリスマスコンサートが終わって、私たちの呼び方が変わった今もそれは変わらない。

先輩はウィーンに行ってしまった。
それは、先輩の音楽の為、先輩が決めた事。
だから、私は先輩に追いつく事が目標。
以前の私は、一生懸命に先輩に置いてかれないように、必死に付いて行くだけだった。
先輩は、私が躓くと助言をしてくれた。
それは、立ち止まって手を差し伸べてくれているようだった。
でも、それだけでは無いのは知ったいた。
きちんと最後は自分自身で、答えを出せるように導いてくれてた。
それが先輩のやさしさ、愛情だって知った時はとても嬉しかった。
いつになるかわからないけど、少しでもいいから、あなたの支えになりたい。
それが今の私の願い。
だから、待ってて下さい、信武先輩…