身長差の恋のお題 【土浦 加地】

見上げれば足元不用心(土浦)
ぶかぶかの上着は彼そのもの
大きな荷物が歩いて来たら
「そっちばっかりずるい!…頭なでさせて」
階段でキスの高さ調整(加地)




見上げれば足元不用心(土浦)

「あっ、おい!」
「えっ?」

突然、聞こえてきた土浦先輩の声。
ビックリして顔を上げたら、あまりに近すぎる距離。
土浦先輩に、しっかり抱きしめられてる状態。
動揺して、心臓はオーバーヒート寸前。
今にも口から心臓が飛び出てきそう。

「大丈夫か?まったく、前を見て歩けよ。階段から落ちたくないだろう?」
大きな先輩の腕の中で、頷く事しか出来ない。
「ふぅ、俺が近くにいてよかったなぁ。転げ落ちずにすんで」
「すっ、スミマセン…」

とにかく、謝る言葉しか出てこない。
何も考えられない。
体も動かない。
その時、急に体が浮いた。
「えっ?」
土浦先輩がお姫様抱っこをして、階段の下まで連れてってくれた。

「ここなら落ちる心配は、無いから大丈夫だろ、冬海?」
そう言って、やさしく下ろしてくれた。
何度も頷く。
そんな私を見て土浦先輩は、私の頭に手を置きながら
「それじゃぁ、これからは、気を付けるんだぞ」
と言って行ってしまった。

その場に残された私は、真っ赤になった。
だって、気になってた先輩が…
そう思った途端、さらに顔が熱くなるのが分かった。


オマケ

「あいつ、あんなに軽いんだなぁ…」
土浦は、先ほどまで冬海に触っていた手を見ながらしみじみ思っていた。
「それに、いい匂いがしたし、柔らか…」
そう思った途端、頭を振り出した。
「いや、あれは落ちそうなのを助けたわけだし…」
それは、誰に言い訳してる訳でもないのに必死だった。
「でも…あー、くそ!」
自分の頭をガシガシとかき回した。
気になる彼女を抱きしめたのだから…





階段でキスの高さ調整(加地)

屋上に続く階段を加地が先に降りていた。
後ろに冬海が続く。
二人はいつもの通りにお昼を一緒に食べている。
学科も学年も違う二人には、お昼休みは貴重な二人になれる時間だった。

加地先輩をこうして上から見れるのって新鮮だなぁ・・・
なんて思いながら階段を下りていく。
加地の方が断然、大きいから冬海が見上げる形になるのは仕方ない。
でも、階段ならその差がなくなる。
さらに自分の方が高くもなれる。

「あっ、冬海さん、あのね・・・!」
何かを思い出したようで、ふいに加地が振り向いた。
「!」
「?!」

時間が止まったような気がした。
加地と冬海の距離は、ほとんど無い。
いつもなら歩いてる時には、加地が冬海の事を見る時は、絶対に視線が下に行く。
しかし今は、まっすぐな先に冬海の瞳がある。
ついでに、とてつもなく至近距離に。

冬海の驚いてる為か、いつもより大きな瞳から加地は、視線を放せなかった。
こんなにも近くに、そして、いつもとは違う視線の距離。
「あ、あの・・・」
「うん、冬海さん。キスしてもいい?」
「えっ?」
加地は、冬海の返事を待たずに、彼女の頬に手を添えて優しいキスをする。
いつもとは、違う。でも、いつもと同じ優しいキスを。

「ごめんね、急に。でも、何だか君とキスをしたくなっちゃって・・・」
「あ、あの、べつに・・・その・・・いやじゃぁ、ないです・・・先輩なら・・・」
下を向いて、耳まで真っ赤になりながらも冬海は、答える。
その仕草は、さらに加地を煽る。
「・・・もう、そんな仕草、しないで。こっちが困る・・・」
加地は、冬海を自分の腕の中に閉じ込める。
でも、いつもとは違い、冬海の顔が加地の顔の横にくる。
こんなにも近く、加地の声が冬海の耳にダイレクトに伝わる。
「かっ、加地・・・せん、ぱい・・・あの・・・」
「ごめんね、本当に、冬海さんは・・・僕を嬉しくさせるのが、上手いね・・・」
「えっ、あの・・・そんな事・・・加地、先輩の方が・・・上手・・・です」
「じゃぁ、お互い様だね。ねぇ、もう一度して、いい?」
「・・・はい」


「ふふふ、ありがとう。でも、こんなキスもいいね♪」
「えっ?あの・・・加地先輩?」
「だって、君との距離が全然ないみたいで」
そう言いながら、お茶目に加地は、片目を瞑って見せた。