真夜中の電話

机の上の携帯が震えた。
こんな夜遅くに誰だろうと思いながら、冬海は携帯のディスプレイ画面に書かれてる文字に驚いた。
吉羅暁彦と。
冬海は、慌ててメールを読む。
そこには、明日どこかに出掛けようという内容の文章だけ。
飾り気の無い、事務的な文章。
でも、冬海にはそれでも嬉しかった。
こうして、メールをくれる。
それは、少しでも気に掛けてくれてる証拠だから…
そんな事を思いながら、返事をどうしようと迷ってた。
もちろん、嬉しい。
でも、吉羅は仕事で忙しいのではないかと。
だから、無理はしないでと…
そうメールの返事に書いた。

返事を送信後、少し経ってから今度は電話の着信が光った。
慌てて通話ボタンを押した。
携帯のスピーカーからは、愛しい人の声が聞こえた。

『まだ、起きてたんだな』
『あっ、はい。少し符読みしてたもので…』
『そうか…先ほどのメールだが、気にしなくてもいい』
『えっ、でも吉羅さん、お忙しいのでは…』
『そんな事は、君が気にしなくてもいい。明日、いやもう今日か…おめでとう』
『えっ?あっ…誕生日…』
『そう、君の誕生日だ。分かったかな、君と出掛ける理由が』
『はい』
『そうか、分かってくれたならいい。だが…』
『…?吉羅さん』
『君に会うのに理由はいらない』
『…!』
『違うかね?君は、私に会いたくは無いのかね?』
『そんな事無いです。あ…会いたい…です…』
『だったら、会えばいい。そうだろう…』
冬海は、本当にかなわないなぁと素直に思う。
『くすっ、そうですね』
『ああ、そうだ。では、今日の午後にでも迎えに行く。それまでに仕度をしておくように』
『はい、わかりました』
『いい返事だ。では、こんな真夜中の電話をして申し訳ない』
『いいえ、嬉しかったですから…』
『そうか、私も君の声を聞けて嬉しいよ。では、オヤスミ…笙子』
『きっ、吉羅さん?』
『ははは、すぐに寝るように。寝不足は良くないからね』
『…はい』
『おやすみ』
『はい、おやすみなさい』

そう言って、電話を切った冬海の顔は、うっすらと赤く染まっていた。
そして、携帯を握り締めながら小さい声で
「…不意打ちです、吉羅さん。普段、呼ばないのに…名前なんて…」
恥ずかしいけど、幸せな気持ちで冬海は、部屋の明かりを消した。
今日、吉羅に会う時に寝不足にならないように…



吉羅理事長×冬海ちゃんでした。
…書いといて何なんですが、この二人どうやって付き合い始めたのかなぁ…
吉羅の方からは、はっきりと告白なんかしないような気がするし…
しかし、まだ吉羅をよく把握してないです。勉強しませんと…