おやすみなさい

意志の強い瞳が今は、見えない。
よく見ると睫毛もとても長くて、綺麗。
男の人に向かって、綺麗という表現は間違ってるかもしれないけど。
でも、そう思う。綺麗でカッコいい。そして、なんだか、可愛い。
そんな事言うと、嫌な顔されるかもしれない。



久しぶりにクラリネットの練習の伴奏をお願いしたのに、先生に用事をいい付けられて遅れてしまった。
「どうしよう、私から頼んだのに。こんなに遅くなって…先輩、帰ってしまったかな?」
急いで練習室の前まで来た。扉の前で一呼吸した。
そして、ノックをする。

でも、返事も物音もしない。やっぱり、帰ってしまった?でも…

「梁先輩?」

静かに練習室の扉を開けてみると、そこにはピアノの椅子に座ってる先輩がいた。
私は、なるべく音を出さないように、近づいてみる。
だって、先輩は寝ていたから。
どうやら、私を待っている間の譜読みの途中で睡魔に襲われてしまったみたい。
先輩も忙しいから疲れてるだろう。
サッカー部とか今日みたく私の練習にも付き合ってくれるし。


床に散らばっていた楽譜を集めて、ピアノの上に置いた。
そして、先輩の顔を見た。
だって、普段は絶対にこんな近くでなんか見れないくらいって近くで。
瞳が閉じてるから?寝ているから?自分でも大胆だなぁって思う。
こんな風に先輩の事、思うなんて初めて会った時には思わなかった。
だって、とっても大きいし、なんだか怖かったから。
でも、不思議。
今は先輩がいない日々なんて考えつかない。


先輩にとっては小さいけど、無いよりいいかもしれないと思って自分の上着を先輩に掛けた。
できるだけ小さな声で

「下校時間までおやすみなさい、梁先輩」

そして、自分はもう一つの椅子に腰掛けた。
今日は譜読みにしよう。
だって、先輩を起こしたくないから。
そして、もう少し先輩を見ていたいから。


先輩、起きたらどんな顔をするかな?
そんな事を考えながら音符の海に視線を落とした。



お題です。初挑戦。結構、難しいですね。
今まで、好き勝手に書いていたので、少し、手間取りました。
で、今回も土×冬です。いいの、好きなんだから・・・