この気持ちの答えは?

いくら考えてもいい答えが導き出せない。
月森蓮は一人で悶々としていた。
理由は、二日前にお菓子を貰った。
コンクールで知り合った一学年下の後輩、冬海笙子から…


その日は練習室が空いてなくて、困っていたから一緒に合奏をしようと声を掛けた。
それまで何度か一緒に練習などもしていた。
そして、何回かそのお礼にお菓子を貰っていた。
月森の好みのあまり甘くない手作りのお菓子。
普段は、そういった物はあまり食べないが、冬海から貰った物は別だった。
何故だか分からないが、とても美味しかった。

そして、ふと気がついた。
いつも貰ってばかりで、何もお返しをしていない事に。
何かお返しをと思っても、すぐに答えが出てこなかった。
女の子が喜びそうな物など、分からない。
できれば、冬海さんが喜ぶ物がいい。
あの笑顔を見たい。
控えめに微笑む彼女を…


「で、なに?月森君、聞きたい事って?」
いくら考えてもきりが無いので、冬海さんと仲がいい日野に助けを求めた。
「冬海さんにお返しがしたいんだが、何を送ればいいのか分からなくて…」
そう言いかけた途端、
「えっ?ええ!!」
素っ頓狂な声を出した日野を見ると、驚いてるのが分かる。
「…なんだ、そこまで驚く事か?俺がお返ししてはいけないのか?」
「えー、いや、そんな事はないけど…」
「ないけど?」
「…月森君、一つ聞いてもいい?」
「…何だ?」
「何でお返しするの?冬海ちゃんに?」
「…お菓子を…貰ったから…」
「お菓子?」
「ああ、他に練習室が空いてなかったから一緒に合奏したんだ」
「ふ〜ん、そうなんだ。あっ、もしかしてそれって、手作り?」
「?そうだが…何かあるのか?」
「そうか、うん、うん」
俺の横で、一人納得している日野がいる。
「ねぇ、月森君。冬海ちゃんの事どう思ってるの?」
「…君には関係ないだろう」
そう答えながら、自分で顔が熱くなるのが分かった。
「まぁ、わかったからいいや。何でもいいと思うよ」
「はぁ?」
「だから、お返し」
「何でもって…」
「月森君が一生懸命考えてくれた物なら、何でも喜ぶと思うよ」
「しかし…それでは…」
「大丈夫!この日野香穂子が保障します」
「……」
呆れて何も言えずにいると
「あー、その顔は信じてないな!」
「当たり前だと思うが…」
「本当に大丈夫だよ。頑張ってね」

そう言うだけ言って、日野は校舎に向かって行ってしまった。
最初に戻ってしまった。
また、自分で考えないと…そう思った時、日野の一言が過ぎった。
『月森君が一生懸命考えてくれた物なら、何でも喜ぶと思うよ』
本当に彼女は、喜んでくれるだろうか?
でも、その事を考えてるのは苦痛ではない。
彼女の事を、喜んでくれる事を思うのは…
案外、楽しいのかもしれない。
もう暫く、一人で考えるのも悪くない。


月森連がこの気持ちの意味を知るのは、暫く後の事でした。



冬海ちゃん、出てこないし…
月森→←冬海な感じ?
両思いですが、二人して片思い?な感じでしょうか?
この2人の場合、周りの方が大変そうです(^^;色々と…
ちなみに香穂ちゃんは、なんとなく冬海ちゃんの気持ちは知ってる感じです。