ふと、前を見ると火原先輩が立っていた。
下を向いて何か考えているみたいだった。
なんだか、声を掛けるのも悪い気がしたが、だからと言って何も言わずに立ち去ることも出来なかった。
いつも明るいく、声を掛けてくれた先輩。
自分から声を掛けるのはほとんど無い。
いつも気が付くと火原の方から声を掛けてくれる。
周りの皆を楽しく出来る先輩。
自然と探すようになっていた。
あの明るい声を、音をそして、姿を。

冬海は、胸元の手をギュッと握って決心した。
「火原先輩、どうしたんですか?こんな所で…その…」
声を掛けた途端、火原がガバッと顔を上げた。
「きゃっ!」
「しょ、笙子ちゃん?!」
「先輩…?」
「ごっ、ごめんね。ビックリさせて…えーと、本当にごめんね」
「いえ、大丈夫です」
「…あのね…いや、その…」
「先輩?」
いつもの火原らしくない。
声を掛けたのは、迷惑だったのかもしてないと冬海は、思い始めた頃、
「あのね、笙子ちゃん。時間ある?」
「えっ?あの、今からですか?」
「うん。だめかな?あっ、いや、無理にとは…」
「はい。特に予定は無いので構いませんけど…」
「えっ?本当?いいの?よかった〜迷惑かとずっと考えててさぁ…ははは…」
「もしかして、さっき考えてたのは…」
「うん、急に誘ったら迷惑かなぁとか考えちゃって…でも、よかった。OKしてくれて」
「先輩…」
「えっと、ここじゃぁ、何だから少し歩くけど公園に行こうか、いい?」
「はい」

火原が先に歩いて、その少し後ろを冬海が歩く。
いつもなら火原が色々と話しかけてくるのだが、今日の二人は公園まで静かだった。

公園に着くと火原は、海をバックにトランペットを構えた。
そして、ゆっくりと音楽を紡ぎだした。
やさしい音。
冬海と火原だけの音楽会。
この優しい音が冬海を包み込んでいく。
そして、心にも染み込んでいく。

公園に漂っていた音が消えてった。

「先輩、とっても素敵でした。私…言葉が…上手くいえないけど、その…演奏、聴けて嬉しいです」
「よかった♪いまのね、笙子ちゃんの為にだけ吹いたんだ」
「えっ?私の為に…」
「うん。だって、お誕生日でしょう、今日は。
で、俺さぁ、一生懸命に誕生日プレゼント考えてたんだけどいい物が思いつかなくて…
その…前に笙子ちゃんが俺だけに吹いてくれた事があったでしょう?
その時、俺、とっても嬉しかったから…ごめんね、こんな物しか思いつかなくて…」
「…そんな事、ないです、絶対に。私、とっても嬉しいです。素敵なプレゼントです」
「本当?笙子ちゃんが喜んでくれるなら、よかった。大好きな人の誕生日のプレゼントだし…」
「えっ?あの…」
「あっ。えーとね、その…もう、いいや、言っちゃえ。うん、俺ね、笙子ちゃんの事が…その…
大好きだよ!だから、みんなとは別にプレゼントしたくて…ごめん。急にこんな事言って…
あー、俺、何言ってるんだろう…」
火原は自分の頭を掻きながら真っ赤になって言い訳をしてる。
でも、そんな火原を冬海は気にしていなかった。
ただ、自分の事を好きだって、言われた事しか頭の中でリフレインしていた。
気になっていた、ううん、大好きな先輩から自分を好きだって言われた事を。

好きだって言われた冬海の反応が気になって、火原は冬海の方を見て驚いた。
冬海が泣いていたから…
「しょ、笙子ちゃん!どうしたの?あっ、ごめんね。俺が変な事言ったから?」
「違う…違うんです、先輩。私…嬉しくて…だから…謝らないで…」
「嬉しい?って笙子ちゃんそれって…」
「はい。…私も好き…です。先輩…」
「本当?やったー!」
「えっ?きゃー」
いきなり火原は、冬海に抱きついたから先ほどの涙は、どこかに行ってしまった。

「俺、すげー嬉しい。ありがとう、笙子ちゃん」
「…こちらこそ、その…ありがとうございます」
火原の腕の中で、今度は冬海が真っ赤になっていた。
海から吹く風は、そんな二人を優しく包んでいた。


仲良く手を繋ぎながら、駅までの道を歩いて行く。

「笙子ちゃんの誕生日なのに、俺もプレゼント貰っちゃったな」
「? 私、何も渡してませんよ?」
「ううん、貰ったよ。とっても大切なもの」
そう言いながら冬海にそっと呟く。
「笙子ちゃんって言う可愛い彼女」
ボンと音がしそうな位に冬海の顔が見る間に赤くなった。
「ははは、可愛い」
「…せっ、先輩…」
「本当の事だもん。もー、皆に自慢したいくらい」
「…それは、止めて下さい。恥ずかしいです」
「そうかなぁ?でも、笙子ちゃんが嫌なら止める。でも、」
「でも?」
「こーやって手を繋いだりしてもいいよね?」
「…えーと、少し恥ずかしいですけど…いいです」
「うん、ありがとう。いつまでもこーしてたいね」
「はい」


今日は、忘れない誕生日になりました。二人にとって…

 
火冬でした。すみません(先に謝っておく)
なんだか、バカップル?ごめんね〜
才能の無い人間が書くと支離滅裂な文になって…(T▽T)