Fron me to you
楽しい時間は、アッという間に過ぎて行く。
それは、大好きな人達との時間だとさらに加速していく。
今日という日、コンクールで知り合った人達が自分の為にお祝いしてくれた。
それだけでも涙が出るくらい嬉しかった。
そして、・・・
「HAPPY BIRTHDAY!笙子ちゃん♪」
部屋一杯に響き渡る声とクラッカーの音。
少しビックリした後で、すぐに笑顔になって、少し照れて
「ありがとうございます。えーと、本当に嬉しいです」
そう話すのは、今日の主役の冬海笙子。
小さな喫茶店でのコンクール参加者とのお誕生日会。
そこには、参加者以外にも天羽と王崎、そしてなぜか金澤もいた。
どうやら、保護者として呼ばれたらしい。
部屋の中では、楽しい時間が過ぎて行く。
みんなで少しづつ出し合って、買ったプレゼントを渡したり、
みんなで合奏したり、楽しくお喋りをしたり、美味しいお菓子を食べたり…
楽しい時間の終わりが近づいてきた。
「あの、今日は、私の為にありがとうございました。私…とっても嬉しかったです」
冬海は深々と頭を下げて、最後の挨拶をした。
そして、楽しい宴は終わりを告げた。
「じゃぁ、またね」
「さようなら」
「また、あしたね」
各々、自分の家に帰っていく。
冬海は、まだ喫茶店の前にいた。また、余韻に浸っていたかったから。
嬉しかった、楽しかった、皆が自分の誕生日をお祝いしてくれたのが。
そして、あの人も一緒に祝ってくれた。
それだけで十分幸せだ。
冬海は、歩き出した。
もう、周りには誰もいない。
帰らなければいけない。それは少し寂しいけれど、仕方ない。
ふと、前を見ると…