ACCIDENT!!

どうして、こんな事になってしまったのだろう?

今日は、とってもいい天気だから、森の広場に行こうと思った
いつものように人気の無い場所を探して、歩いてる内に何か騒いでる声がしたので
そちらの方を覗いたのがいけなかった。
そう、騒いでたのは、コンクール参加者以外には見えない子達だった。
ちょうど、私の目の高さ位で、3人で輪になって、騒いでる。
というより口論してる?
「だから〜なんでわかんないのよ!」
「え〜、でも・・・」
「大丈夫だってね」
「ん〜、そうね」
「リリ様に一応、言った方が・・・」
「・・・も〜、それじゃ、ダメなのよ!」
なんの話をしてるんだろう?ともっと近くに寄ろうとした時、急に目の前が真っ白になった。
「〜!!」
遠くで何か聞こえる。だんだん、その声は近くなってきた。
「ちょっと、大丈夫?」
「平気?ねぇってば!」
「うーん、だ、大丈夫・・です」
まだ、少し目がチカチカするけど・・・
一体、なんだったんだろう?ファータ達のイタズラだろうか?とか思いながら辺りを見渡した。
「!!」
「よかった!目を覚まさないからどうしよーかと・・・」
「だから言ったでしょう?大丈夫だってさぁ」
「あ、あの・・・どうして私・・・あなた達と同じ大きさなのでしょうか?」
どう見ても、ファータと同じ大きさになってる。
これは・・・
私が小さくなってる。だって、周りの風景がとてつもなく大きくなってる。
「えーと・・・ごめんね!」
「あはは・・・手違いで、魔法がかかっちゃた」
「・・・あの、早く元に戻してくれませんか?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「?」
暫く、3人のファータはお互いの顔を見合わせていた。
そして、
「ごめん!元に戻し方、知らないの!」
「えっ?」
そう言うと素早く姿が見えなくなった。
「ごめんね〜!今から戻し方、調べてくるから!」
「ちょっと、待っててね!」
そんな言葉と小さくなった私を残していなくなってしまった。

「・・・・・・」
いつもより大きくなった森の広場に、残されてしまった。
どんどんと不安が大きくなってきた。
どうしよう、このまま元に戻れなくなったら・・・
そんな事、考えていたら視界がぼやけてきた。
「ふぇ・・・梁先輩・・・」
こんな時、不安な時、すぐに先輩の事が浮かぶ。
「先輩・・・先輩・・・」
声に出してないとどうにかなりそうで・・・
不安で、寂しくて・・・
涙が止まらなくて・・・


ガザッ・・・
近くの茂みから音が聞こえてきた。
「だ、誰?」
そしかしたら、さっきのファータ達が戻って来てくれた?
その考えは、すぐにかき消された。
茂みから出てきたのは、大きな猫だった。
「にゃぁ〜」
こっちに向かって来た。後ずさりする。
その分、猫は近づく。
ジリジリと距離が縮まって行く。
いつもなら、可愛い猫も小さくなってる私にとっては、怪獣だ。
とても怖い!足が、体が、ガクガクと震えてる。
猫の前足が私に迫ってきた。

(もう、ダメ!先輩!助けて!)
とっさに目を瞑った。でも、いくら待っても何も起きなかった。
そのかわりに今とても会いたい人の声が聞こえた。

「大丈夫か?笙子?」
目を開けると、そこには大きな先輩がいた。
「猫の奴は、追っ払ったから大丈夫だ。しかし本当に小さくなってたんだな」
先輩は、震えてる私を手のひらに乗せて、その場に腰を下ろした。
嬉しくて、驚いて、私は先輩の顔に向かって抱きついた。
「こ、怖かったです・・・先輩!本当に・・・私・・・」
次から次へと涙は止まらなくて・・・そんな私に先輩は、
「もう、俺がいるから泣くな」
って、言ってくれたけど、それでも止まらない。
暫く、先輩は優しく背中を触っててくれた。

落ち着いてから、疑問に思ってる事をきてみた。
「どうして、先輩はここに来たんですか?」
私がここに来た事は知らないはずだし、まして、小さくなってしまった事は分からないはずなのに。
「あー、それはな。あの羽つき達が騒ぎながら教えてくれたんだ」
「それで、先輩はここに来てくれたんですね?」
「まー、本当が疑ったんだが、あいつらがヤケに真剣に喋ってたんで・・・まぁ、来てよかったぜ」
「・・・私・・・」
「しかし、今度あいつら、逢ったらただじゃぁすまないなぁ。笙子をこんな怖い目に合わせておいて」
「えっ?でも・・・あの子達も悪気があったわけじゃぁ無いだろうし・・・」
「・・・まっ、羽つまみの刑位にしてやるよ」
私は、少し先輩の言い方が可笑しくて笑った。そうしたら、
「やっと、笑ったな。やっぱり、笙子は笑ってる方がいい」
「///」
顔が一瞬にして熱くなるのが分かる。
いつも、こんな感じの事、言われると照れてしまうが今日は特にてれてしまう。
だって、先輩の顔がいつもより近いから。全身で先輩を感じてしまうから。
先輩の手に乗って、先輩はその手を顔の近くに持っていってるから。
きっと、今の私は茹だこのようだろうなとか思ってしまう。
さっきまでの不安とかは何処かに行ってしまった。
先輩が来てくれただけで。
「さて、いつまでもこうしてて仕方ないな。リリを見つけるか?」
「えっ?リリちゃんを?どうして?」
「一応、あいつらの親玉だろ?部下の始末は上司が責任をもつだろ?」
「あっ、そうですね。リリちゃんなら戻し方、知ってるかも」
「だろ?そうとなれば、練習室に行くか」
「?どうして、練習室なんですか?先輩」
「あいつらは、音楽のファータなんだろ?」
「!! そうですね、先輩のピアノの音楽を聞きに来てくれるかも」
「やっぱり、先輩はすごいです。私なんか、何も考えつかなかったです」
「///そんなに褒めても何も出ないぞ」
・・・先輩はそう言いながら、いつもの癖で口元を手で隠してる。
なんだか、可愛いかも。とか思っていたら、急に体が浮く感じがした。
「きゃー?!」
「あっ、悪い。大丈夫か?」
「あっ、はい。平気です」
先輩、立ち上がったんだ。ビックリした。
「えーとな、笙子。少し、狭いが我慢してくれないか?」
「・・・?なにがですか?」
そういいながら、先輩は、私を上着のポケットの中に入れてくれた。
まるで壊れ物のように、私を優しく、そっと。
そして、ポケットが出来るだけ揺れないように歩いてくれた。
私は、先輩のポケットの中で、
(これから、どうなるんだろ?元に戻れるのかなぁ?)
(大丈夫、先輩がいるんだもん)
そんな事を考えながら、上を見上げると先輩の顔が見えた。
見たことの無い角度での先輩の顔。
少しだけ、小さくなってよかったかも・・・
なんて、いけない考えを頭の中から追い出そうと頭を振ってみた。
ふと、見上げてみると、さっきの私の行動を先輩は見ていたようで、少し呆れた顔をした後、
とても優しい顔をしてくれた。
そんな時に私は、思う。
先輩を好きになってよかったって・・・


すみません、もう少し続きます。
こういう話は、ファータ達がいるからできる話ですね。普通の学園物では無理な話〜