可愛い?〜月森蓮と日野香穂子の場合〜


あまり人気の無い屋上で軽やかにヴァイオリンの音色がしていた。
しかし、大きな雑音で掻き消された。
「月森君〜みつけた♪」
それは、屋上のドアをけたたましく開けた、天羽と 天羽に引きづられた日野香穂子だった。
「・・・」
とっさに、月森は警戒した顔をした。
そう、香穂子がこういう状態の場合ろくな事がおきない。
幾度となく経験してきた結果だった。

「やっぱり、ここだったね。ねぇ、香穂子の読みは当たるわ♪」
「・・・あはは・・・ごめん、蓮くん。練習の邪魔しちゃった?」
「いや、別にかまわないが・・・」
(今回は、何がおきるのだ?)

月森の警戒を察知したのか、天羽はわざと気にしない様子で
「ふふ、別に変な事はないよ。警戒しなさんなって。」
「・・・毎回、君に付き合うとろくな事が起きない。警戒するなって言う方が、無理だ」
天羽は、その言葉に少しムッとしたのか、わざと意地悪い口調で受ける。
「ふーん、せっかく香穂のかわいいプリクラあげようとしたのに・・・
いらないのか、そうか残念だな。
メイドやナースの格好してるのに・・・いやー、残念、残念」
「メイド?ナース?なんでそんな格好の・・・」
そんな事、おかまいなしに喋り続けている。
「昨日、3人でプリクラを撮ったんだよ。香穂、可愛いく撮れてるのに。
残念、いらないのか。ねぇ、香穂?」
今まで2人の会話にハラハラと見ていた香穂子だったが、急に話を振られてビックリしている。
「えっ?えっ?えーと・・・」
「そうだなぁ、これ他の人にあげてもいい?」
「えっ?そんなのあげても仕方ないよ・・・」
「そんな事ないよ〜。結構、あんたもてるんだし」
天羽は、手のプリクラをヒラヒラかざしながら、香穂子と話してる。
(なんだって?香穂子のメイド。そんなのを他の男に・・・)
すでに月森の頭の中は、パニックになっていた。
「誰にあげようか?それとも・・・報道部で、うわっ!?」
天羽の手の中のプリクラは、月森によって奪われていた。
「なにするのさぁ、急に。さっき、いらないって・・・」
と言ったとたん、月森の凄い睨みが飛んできた。

(うわっ、マジで怖いかも・・・)←天羽の心の声
「これだけか?」
「へっ?」
「撮ったのは、これだけかと聞いている」
「・・・そうだよ、それだけだよ」
暫くの沈黙の後、月森が口を開いた。
「これは、俺が貰う。かまわないな?天羽さん」
「・・・欲しいなら、欲しいって言えば?月森君」
その途端、月森の顔が赤くなった。ソレを見逃す天羽ではなかった。
「ふふふ、こっちも面白い物みれた〜と♪さて、邪魔者は消えますか。じゃぁね、香穂!」
言いたい事を言って、去って行った。
そこには、少し顔を赤くしている月森と、何て声をかけていいかのか迷ってる香穂子が残った。
「あの・・・蓮君?怒ってる?」
いつまでも返事が無いので、香穂子は月森が怒ってると勘違いしていた。
「ごめんね、変な格好して。でもね、撮ってる時は、楽しかったんだよ。笙子ちゃんも一緒にワイワイ騒いで・・・」
そこまでしか香穂子の言葉は、続かなかった。
月森の腕の中に納まっていた。
「えーと、蓮君?」
「もう・・・こんな格好しないでくれ・・・」
「ごめん。やっぱり、似合わないよね。もう、しないから」
「そうじゃなくて・・・香穂子は・・・」
「??」
香穂子に呟く。甘く切なく。
「こんな格好されたら、俺の理性が持たなくなるから・・・」
自分で言って、さらに赤くなる月森と、そう囁かれた香穂子も月森に負けずに真っ赤になっていた。



<おまけ>
「天羽先輩、どうしたんですか?」
報道部の部室で考え込んでいた天羽に後輩が声をかけた。
「いやー、コンクール参加者のコスプレコンテストなんかさぁ、いいかなって思って」
「あっ!それ面白そう」
「でしょう?企画してみようか?」
「いいですね」
「じゃぁ・・・」
参加者が聞いたら、即に却下されそうな企画が報道部で話し合われてた。
この事は、後日、参加者が知ることになった。


「可愛い?」の月森×香穂バージョンです。
土×冬を書いてて、月森も書きたいなぁ…なんて思ってたんですよ。
4人とも天羽ちゃんに遊ばれてます。(^^;)
でも、さりげなくフォローしてくれる頼れる人ですよね、彼女は。
しかし、疲れる…文章を書くのは。
えーと、ここまで読んでくれて、ありがとうございます。